本態性振戦
生活に影響が出ればお薬などの治療をおすすめします


 本態性振戦は頻度の高い疾患の一つで、全人口の1-3%に観察されます。年齢とともに頻度が高くなり、高齢になると多くみられる疾患です。ふるえは手に多くみられ、お箸やお茶碗を持ったり、ものを書くことに影響をあたえます。特に、緊張するような状況、たとえば会食や結婚式などでの記帳、スピーチの際にはふるえは強くなることが多いです。
 ふるえ以外には症状はありません。また、MRI検査でも脳に異常は認められません。
 
原因について
 それでは、本態性振戦の原因はどこにあるのでしょうか?すこし、難しいお話になりますが、脳の神経細胞は神経ネットワークを持っていて、そのネットワークは興奮性細胞と抑制性細胞によって電気的に調整されています。このネットワークのひとつに小脳ー視床ー大脳皮質の回路がありますが、この視床での調整がうまくいかないことが本態性振戦の原因と考えられています。
 
診断と治療について
 ふるえは色々な原因でおこります。高い甲状腺ホルモン値、内服薬の影響、脳卒中、パーキンソン病などがふるえの原因となりうるので、採血や内服薬のチェック、頭部CTやMRIでの精査を行います。これらの疾患が鑑別されて、本態性振戦と診断されます。
 治療は基本的にはお薬の内服です。血圧のお薬やけいれんのお薬が効果的で、これらを症状の強さに合わせて選択します。症状が軽度で日常生活に支障が無い場合には、お薬は内服せずにそのまま経過を観察していきます。また、緊張が強くなった際に振戦が強くなる場合には、緊張するときだけ内服をする方法もあります。
 本態性振戦の治療目的は、ふるえを出来るだけ押さえて日常生活を送りやすくすることです。職業によっても治療の必要度は変わると思われますし、また利き手かどうかでも変わってきます。
 またゆっくりと、多くは年単位で、振戦が強くなることがありますので、それに併せて外来ではお薬を調整していきます。お薬での治療がうまくいかない場合には、脳にペースメーカーをいれる脳深部刺激療法という治療があり効果が高いです。
 
 
 本態性振戦は、生命に関わる病気ではありませんが、症状が強いと日常生活に影響をあたえます。症状の強さや生活環境を考慮したオーダーメイドな治療計画が大切になります。